扇(おうぎ)を動かすエクスプレッション AfterEffects CC 使い方

扇(おうぎ)を動かすエクスプレッション AfterEffects CC 使い方

2018年の年賀ムービーを作成した際、
扇(おうぎ)が開くという表現をアニメーションで作成しました。

現実の扇の動きは留め具=要を基点として開いていくのでなんとなく想像がつきますね。

これをアニメーションで行う場合は、どのようにすればいいでしょうか?
「骨」一つずつにキーフレームを割り当てて行く?

もちろんそれでも可能ですが、一つずつ角度を割り出していくコトになるので、結構面倒ですし、キーのズレが起こると動きもズレてしまいます。

これはキーフレームとエクスプレッションを組合せれば解決できます。

おはようございます!
デザイン講師ブロガーのセッジです!
扇子が開く仕組みはエクスプレッションを使った方法です!
設定ができれば2つのレイヤーだけで動きを作ることができるんですよ!


年始のご挨拶の記事でも書いているように、illutratorで扇子の素材を作っていたときから、これが開くアニメーションを作るつもりでした。

現実世界では何気なく動かしているものをアニメーションで実現しようと思った時は、いろいろな手法・技術で表現していくことになります。

以下が年賀ムービーの記事になりますので、こちらもご参照の上、記事を読み進めていただければ幸いです。


【この記事は2019年10月29日に更新されました】

illustratorでの準備

「イラレで扇子を描く方法」では開いた状態の扇子でしたが、今回は動画なので閉じている状態から開いていく、という仕組みを作る必要があるので改造していきます。

下図は扇面のみ表示しておりますが、一旦選択してオブジェクトメニュー→分割・拡張を実行しておきます。

分割・拡張オプションではチェック項目がありますが、これらは全部そのままでOKを押してかまいません。

扇子の改造1

つづいて、illustrator講座の方で扇子を作った時に用意したガイドラインの「要」位置から直線ツールで垂直に上に向かって直線を引き(下図点線部分)、回転ツールでAlt(Opt)+クリックをして回転オプションを出したら6度と入力して傾けましょう。

さらにもう一本左右対称に線が必要になりますので、もう一度線を引いて-6度傾ける、左側の線を-12度でコピーする、リフレクトツールで反転コピーする、などで
作成しておいてください。

左右対称の斜め線が作成できたら、扇面とともに選択してウインドウメニュー→パスファインダーの分割ボタンを押しますと、この斜め線を基準にして、扇面が分割されます。

扇子の改造2

分割された形状はグループ化された状態になっていますので、右クリック→グループ解除をしてから、一度選択を解除して、中央のちょうど扇面を閉じたように見える部分以外は削除してしまってください。

下図では見えませんが、下に透明な細い三角形のような形もできてしまうので、そちらも削除しておきましょう。

扇子の改造3

それでは隠しておいた骨を表示して、中央の垂直の骨以外はすべて削除しておき、ガイドラインの要位置を中心とした円を一つ描いておきます。

要のサイズは骨の太さを超えなければ適当で良いと思います。
これは後ほどAfterEffectsで回転の基準位置になります。

扇子の改造4


AfterEffectsでのセッティング

ではillutratorで準備した扇子イラストを読み込みます。
ファイル→読み込み→ファイルですね。今回はレイヤーが1枚しかありませんので、種類はフッテージで大丈夫です。

つぎにコンポジションメニュー→新規コンポジションでHDTV 1080 29.97を選んでコンポジションを作成し、このコンポジションのタイムラインに扇子の素材を配置しておきましょう。

ここではレイヤーの名称が「sensuGld」となりますが、ちょっとわかりづらいので、右クリック→名前の変更で「nakabone01」に変更しています。

数字をつけたのはこのあと複製するためなので、必ず付けるようにしてください。

名前の変更

また、今回HDサイズのコンポジションに配置したところ、かなり小さくなってしまいましたので、スケールを200%にしたのですが、拡大してしまうとギザギザが見えてしまいます。

こういうときはスイッチといいますが、レイヤーの右側に小さなアイコンが並んでいたり、空欄になっている箇所があり、そこの左から二番目の欄、連続ラスタライズというスイッチをオンにしておきましょう。

連続ラスタライズ

これがオンになっていますと、ベクターグラフィックの「解像度に依存しないので拡大縮小に強い」という特性が生きてきます。

つづいて、回転の基準点、アンカーポイントを移動しておきましょう。
アンカーポイントツールに切り替えて、要を表す黒丸の位置に移動しておきます。

基点の移動

回転の基準も調整できましたので、選択ツールに戻し、nakabone01を複製しましょう。このレイヤーを選択した状態で編集メニュー→複製、または、Ctrl(Cmd)+Dで複製することができます。全部で11枚のレイヤーになるようにしてください。

このようにするとnakabone01→nakabone02→nakabone03…という具合に、最初のレイヤー名に半角で数字が入っていればレイヤーが増えるごとに自動的に数字が増えていきます。

複製が終わりましたら、名称を、nakabone11をOyaboneA、nakabone01をOyaboneBに変更しておいてください。


扇のアニメーションを作るには

では扇のアニメーションを作ってみましょう。
1秒で扇が開くようにするには、Rキーを押して回転の設定を出し、ストップウォッチボタンを押してから角度に数値を入れることになります。

「扇の作り方」では120度になるように作りましたので、今回もそうしたいのですが、左右に開きますので、OyaboneAを0秒では0度、1秒で60度、OyaboneBは同じく0度と-60度になるようにキーフレームを設定しておきます。

親骨の回転

つぎにnakaboneそれぞれにも動きの設定をしていくことになるのですが、最大に開いた1秒の時の数字はそれぞれ外側にある骨よりも12ずつ減るようにしなければなりません。

また、1回開くだけなら良いのですが、開いたり閉じたりを繰り返すような動きを表現する場合、11枚のレイヤー全てのキーフレームを調整するので、ちょっと大変になってきます。

ここで登場するのがエクスプレッションという機能です。


エクスプレッションとは

エクスプレッションとは、直接的には「表現」、数学的には「式」という意味になりますが、AfterEffects的には簡易的なスクリプト=プログラムのようなもの、になります。

なんか難しいこと言い出した…!

おっと、ここで引かないでください(^_^;)


私も最初は難しく感じたものですが、今回の場合は各レイヤーに1行書くだけで済みますし、簡単なものであれば覚えてしまった方がキーフレームを1つずつ付けるよりも楽になることも多いです。

さて、エクスプレッションの前に、タイムラインで同じ方向へ傾くグループ毎にレイヤーラベルをつけておきましょう。

これはレイヤーを色分けすることで、どのレイヤーで作業しているのか、あるいは、似た動きをするものなどを作業上整理しやすくしてくれる機能です。

ラベルを変える場合は各レイヤー名の左側にある色のついた四角をクリックすることで変更することができます。複数選択した状態であればまとめて変更することもできます。

ラベル設定

ちなみにnakabone06だけ独立した緑のラベルになっているのは、この骨は中央にあるため動かないからです。

それではnakabone10の回転を出して、ここでAlt(Opt)キーを押しながらストップウォッチをクリックしてください。

通常ストップウォッチをクリックするとアニメーションのオンオフになりますが、Altキーを押した場合はエクスプレッションのオンオフとなります。

すると、タイムラインが下図のようになります。

エクスプレッション1

まず、回転数と角度の数値が赤くなっています。これはこの数値がエクスプレッション化されているということを表していて、タイムラインの方をみると文字が打ち込めるようになっており、ここでは transform.rotation となっています。

これは「トランスフォーム設定の中の回転」ということを意味していて、今はこのレイヤーそのものの情報ですが、ここからOyaboneAの回転情報を参照します。

一度 transform.rotation を削除してから、うずまきボタン=ピックウィップから線を引き出して、OyaboneAの回転に繋いでください。

エクスプレッション2

この状態ではnakabone10は常にOyaboneAの回転と同じ動きをするようになりますが、本当はOyaboneAと同じタイミングで動くけれど、最大に開いた時は少し角度の数値が低い状態、キーフレームでやる場合の「外側より12少ない」にしたいのです。

この場合は以下のようにしてみてください。
このまま1行分コピーペーストしてもかまいません。ただし” ”で囲んだ部分は実際のレイヤー名と同じになるようにしてくださいね。
thisComp.layer("OyaboneA").transform.rotation*4/5
thisComp~rotation については「OyaboneAと同じ角度になるようにしなさい」という意味ですが、そのあとの「*4/5」の*というのは掛け算、/は割り算を表しています。4/5と書いた場合は5分の4ということでもありますよね。

ですので、この場合は「OyaboneAの角度の4/5の数値になるようにしなさい」という意味になります。

ではこの手順で、同じく他の骨の回転もエクスプレッションにして、
nakabone09は最後が3/5、08は2/5、07は1/5となるようにしていくと、図のように右側だけ開くようになります。

扇子右側展開

左側については、nakabone02から、
thisComp.layer("OyaboneB").transform.rotation*4/5
でスタートするようにして、nakabone03は3/5、04は2/5、05は1/5になるように書き込んでいってください。

これによりOyaboneA、Bのタイミングで全ての骨が開閉するようになります。


まとめとサンプルデータ配布

今回は当ブログでも初となるエクスプレッションを使った扇子が開くアニメーションの仕組みの作り方でした。

エクスプレッションは仕込むまでがちょっと面倒ですが、できてしまえばかなり楽にアニメーションを作ることができます。

例えば今回の扇子の場合ですと、このあとアニメーションを調整するとしたら、親骨だけですんでしまいます。

以下にAfterEffects CC2017形式のプロジェクトファイルと、改造したillutratorファイルを置いておきます。

こちらはアニメーションの素材として利用しても構いません。
参考にしてみてください。


もし記事中判りにくいところがあったら、コメント欄、またはお問合せよりご相談ください!
それでは今回はこの辺で!また、他の記事でもお会いしましょう!





ブログランキング参加中!
このブログが役に立ったと思ったら、投票をお願いします!

にほんブログ村 デザインブログへ



コメント